1 満月とボタン雪  

 

        〜誘われるままに

 

 

何かに誘われるように

疲れた体が歩いている

悲しいわけでも

淋しいわけでもなく

  

疲れを遠くに感じながら

ただ歩いている

 

今は真夜中

 

街路灯の光線1本1本が

輝きを増し

ボワッーボワッーと広がり

柔らかなタッチで道路を埋めてゆく


光の霧のトンネルをくぐり抜けると目の前に小さな青い丘が現れ

その天辺には、4,5本の細い木々のシルエットが

模様の様に浮いている


登るというより

ゆっくり上がっていくと

突然、皓々と照る満月が視界に入った 

「そう、今日は満月 雪も降っている 」

月はこの上なく大きく、明るく、丸く、目の前に浮かんでいる

ボタン雪は、切れ間なく柔らかな綿の花びらとなって

天と地を結ぶように降りてくる

 

どれぐらいの時が過ぎたのか

微動だに許されない1瞬1瞬

真空の中にうずくまり、覗き見をするように

「満月とボタン雪」の織りなす

神秘のショーを見つめ続けた

 

「ある 知らない別の世界が」

 

慌ただしく、走り去っていく時間の片隅に

目に見えない別の世界が存在することを

このときすでに確信している


満月とボタン雪の夜

神秘な世界の入り口のドアをたたいたのだと知ったのは

7年後のことである                  

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