11 秋神の祈り 

 

   〜新聞の切り抜きを持って    列車に飛び乗り...

 

チベット仏教の今 

ブッダガヤ世界平和セレモニーの祈り 

第三章 チベット仏教の瞑想

「空性」体現の修行と伝承 

                        林 久義


これは ある新聞の「ともしび」という欄に載った

記事の見出しである 

林氏は 

岐阜県秋神というところに在住のチベット仏教 ニンマ派のラマ僧で 永年カリフオルニアのオディアン寺院で修行された方であるという 

 

粒子おばさんは直感で会いたいと思った 

夏もそろそろ終わろうとする頃 急に1日休みがとれた 

 

迷うことなく新聞の切り抜き1枚持って「ワイドビュー飛騨」に飛び乗った 

もちろんアポなどとってない 

縁次第というところが 粒子おばさんの流儀である 

川に導かれるように 列車はひたすら山間を北上してゆく 

空にはまだ入道雲が立ち登っている 

高山駅は観光客で賑わっている しかし どこか都会と違ってのどかである 改札口をでるとすぐ タクシー乗り場へ向かった 

車の外で雑談している2 、3人の運転手さんに近づき 「秋神へいきたいのですが...」と声をかけると 観光客にしては何も持たない姿をチラリと見ながら  

「かなり遠いですよ 1時間は見ないと 」

切り抜きを見せ 

「この方に会いに行くのですが 暗くなる前に戻って電車に乗るにはどうしたらいいでしょうか 」

運転手さんは 時計を見ながらもう昼過ぎなのだが 

「お客さん それでは 4時に秋神に迎えに行くということで どうですか 料金は1万円ということで...」

あまり時間の余裕はないが決まりである 

高山はさすが観光地である 

町を抜け山へかなり入っても整備された道が続き 

「○○スキー場」「○○リゾート」と道しるべが目につく 

30分も走ると だんだん両側の木の枝がトンネルをつくり始め その中をしばらく走ると 目の前が急に開けた 

この細長い谷が秋神らしい 

村の入り口にバス停があり そこでタクシーを降りた 

「4時に又ここに迎えにきます 」

タクシーは ターンしてすぐに緑の中に消えていった 

谷の真ん中に車1台通れる道があり その両側に田んぼが段々と続き その中に ポツンと家が見える 

道端には そこここに大小の祠があり お参りしながら村の奥へ進んでいった 

町から来た者には 許可を得ないと入れないような場所である 

フッと 修験の山すそのふるさとが蘇る

4、5軒の家が集まったところが村の中心だろう 軒先からおばあさんがこちらを見ている 

近づき

「こんにちは 林久義さんのお宅はどちらでしょう 」

「ああ 林先生のとこへ行くのか 先生の家は一番奥じゃ このままゆけば すぐにわかる 」

静まりかえった景色の中に身も心も溶け消えかかっている 

そっと そっと進んだ 

「先生の家」は その先にあった 

小さな家である 

呼吸を整え

「こんにちは」と声をかけた 

返事はない 

もう一度

「こんにちは」静けさだけである 

草むらの岩に腰を下ろし「ご縁がないのかな」と思いながらお茶を飲んでいると...

後ろから

「どこからきたんじゃ 」

不意に声をかけられた 振り向くと 刈草に体をすっぽり包まれたおじいさんが笑っている  

「名古屋からきました 林先生 お留守のようですね 」 

「先生は 毎日, その上の地におる 」

家の横の小径を指し 

「自分一人で寺院を建てておられるのじゃ 行けば会える 」

確かに澄みきった空気の中を「カーン カーン」とかすかな音が伝わってきた 

 

                                                                  次へ