2 今年の花火が最後かもしれな  い    

     〜病院の窓辺で… 

 

     

「今年の花火が最後かもしれ

  ない」

 うす曇りの空に、空砲の花火が

 上がり始める昼下がり

 住み慣れた病室の窓辺で

 つぶやく

 自分に言い聞かせるのか

 それとも妻に伝えたいのか

 きっと両方だろう

 

 5年前、朝から深夜に及ぶ17

 時間の大手術をする

 余命半年といわれながら  

 仕事復帰こそできなかったもの

 の酒を飲むしタバコも吸う

 

 傍目には病気になる前とあまり変わらない日々を送っていた 

「あれもやりたかった  これもやりたかった  子供のことを考えると死にきれ

 ない」 言いたいことが  いっぱいあるだろうに 意外の程淡々と日々が過ぎてゆく 


 手術から5年が過ぎ 子供の頃から楽しんできた6月の"提灯祭り"が終わると 急速

 に足腰が衰え  首も自分ひとりでは支えられず 目が離せなくなる

 そんな状態にも関わらず意識はしっかりしており 車いすで病院のロビーの話の輪

 に加わる

 しかし そんな時間もあまり残されてはおらず 最後に妻の名を呼びながら 意識が

 消え去った 

 傷だらけの 小さな身体だけ残して




     

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