3 もう妻と呼ばれることはない      

  〜時は優しく流れ…

 

 もう妻と呼ばれることはない  


  時は優しく流れ 何ものも紛らわすことの

  できないすっぽり空いた心が 

  少しずつ埋められようとする頃 

 「コンビニの店長さん」が誕生した 


  このころのコンビニは24時間 年中

  無休で仕事が終わることはない  

  毎日 始発の終電  時には事務所の 床に

  段ボールを敷いて寝ることもある    

 3年間 皆勤の生活である   

  店長さんは 伝票2、3枚繰ると コックリ 食事中もコックリ

  万年睡眠不足の状態である 


  楽しみといえば  コーヒータイムと読書である

  家から駅までの5分間は自販機のコーヒーを飲みながら

  ささやかな自然を楽しむ 

  駅から店までの10分間は歩きながらの読書 

  帽子を目深にかぶっているので自分の世界である  

 「店長、どこまで行くの」 

  スタッフに呼び止められなければ通り過ぎてしまうこともある               


  ある朝 いつも通り自販機にお金を入れボタンを押そうとした瞬間 

  ニューッと自販機の脇から  コーヒー の手が出てきた  

 「キャーッ」

 「はい。コーヒー」

  子どもからの差し入れである

  こういうことがあるので過労死も免れるというものである 

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