5 白いエネルギーに包まれた   もう一人の自己 

 

  〜満月とボタン雪から            7年が流れ

 

 

店長さんは 

ただいま16時間勤務である 

この日も 

もう日付けが変わる頃家に着いた 
「今日もよく働いた  

 いい子 いい子」

自分の頭を

「ボン ボン」

たたきながら

布団に潜り込むとすぐ

眠りに落ちた 

 

 

 

 

  今は真夜中

  ボロボロの肉体はすでに

  すべての重力と緊張を脱ぎすて

「大の字」の死体となって

 横たわる

 意識は無意識への

 階段を下りはじめ

 最後の一段で立ちどまる

 振りむけば遠くに

 一点のあかりが まだ

 みえるはず...

 

 ???

 うーん?

 真っ暗なへやの空間に

 横たわる雲のように

 白いエネルギー体が

 ポワンと浮いている

 なぜか

 それは「わたし」と知っている

 屍となった肉体と

 浮いている白いエネルギー体

 そして、みているわたし

 三層の「わたし」

 ???

 

 朝

 屍は新しい衣服を

 身にまとい

 わたしを抱く

 ½の重力と½の緊張を

 取りもどし

 新しい朝となる

 

 

 夜中のことを 「あれはなんだったのだろう 」と考えながら起きだすと

 異様に体が軽いのに気づく 本当はかなり重いのだが… 

 そして 驚いたことに学生の頃からの重度の肩凝りが跡形もなく消えていたので

 ある 

 臨死体験をした人が 上の方から病院のベットに横たわる自分を見たという現象は 

 よく聞く話だが

 普通に寝ている自分が 下から浮いているもう一人の自分を目撃した話は聞いた

 ことがない 

 この出来事は 忙しさに紛れ忘れられていた 


 どれくらい過ぎた頃か

 頭に手を乗せると腕がなく 手のひらだけが帽子のように乗ってる感じがしたり 

 机に乗せた手が少し浮いている気がしたりするのに気づいた  

「もしかして、更年期障害?」

 障害にしては 気分がいい 今までにない感覚に

「どういうことだろう 」


 自分の体に起こっていることなので忙しいからといって 無視はできない 

「病院へ行ってみよう 精神科だろうか それとも心療内科だろうか 」

 店長さんは大の医者嫌い 薬嫌いも甚だしい 

 あれこれ考えているうち 病院へ行っても適当に精神安定剤を処方される

 だけに思えて行くのは止めにした  

「自分で調べてみよう」


 幸い店長さんは「読書と一人歩き」が趣味である

 早速 本屋さんへ行ってみた 

 意味は分からないが『瞑想』という言葉が浮かんでいたので

『精神世界』のコーナーに行ってみる

 するとそこには瞑想の文字がたくさんあった 

「自分の知らない世界がこんなにあるのか 」


「本棚を見ると その人の内側が覗ける」といわれる 

 店長さんの本棚は殆ど 歴史小説 歴史書である 

 読んだらどの時代の本か読書年表を作ったりもしている 

 2年前 ひったくりにあった時 咄嗟に「であえーっ であえーっ 」と大声で助けを

 求めたほどである 

     

 暗く不透明な世を 女ひとりで清々しくシンプルに生きるためには

 全てのものを測れるものさしが必要であった

 普遍的な真理が必要であった

 ずっとそういうものを本のなかに歴史のなかに探していたのだ 

 目の前に新しい景色が見えはじめた気がした 

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